夏は必ず一か所は蚊に刺されてしまうのが恒例ですが、通常はかゆみを感じたり、赤い腫れが出たりといった症状だけで済みます。
しかし、まれに蚊に刺されたところから悪化して、熱を伴ったりなどの症状が現れることがあります。
もし蚊に刺されて全身の症状や重症を感じるようになってきたら、「蚊アレルギー」を疑った方がいい可能性があります。
今回は蚊アレルギーの症状や概要、原因などについてまとめていきます。
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普通の虫刺されはアレルギー反応
蚊によって刺されると赤く腫れ上がり痒みが伴いますが、これはアレルギー反応です。
蚊は、昆虫でハエ目カ科に属し、血を吸うのはメスだけで、人間から血を吸うときは血が固まらないようにするために唾液を注入し吸血をします。
刺した時に人間が痛みを感じないよう、麻酔のような成分も含まれていますが、時間がたつと刺された部分かかゆくなって赤く腫れ上がってきます。
これは蚊の唾液に対し、人間の体が反応して起こる皮膚炎です。
アレルギー反応が強く出る人は赤く腫れてかゆみが襲うだけではなく、じんましんや熱を持ったりといった症状が出ることがあります。
とくに、生まれて初めて夏を迎える乳児の場合は、蚊に対するアレルギー反応に注意をはらう必要があります。
蚊に刺されたときの対処法と、蚊にさされの予防法
蚊に対してのアレルギー反応が強い場合は、蚊の活動が活発になる時期が来る前に対策をしましょう。
主に抗アレルギー剤の服用や、刺された時の応急処置の方法を皮膚科で相談するのが一番です。
なお、刺される前に家でできる対策方法などについては以下の記事でまとめています。
⇒蚊の部屋での対策法!屋外や庭、ガーデニングでは?寝るときはどうするか
- 虫除けスプレーは5時間ほど持続するが、汗をかくと落ちるので、外に出る毎につけ、忘れないうちにこまめに塗り直す
- 普段から爪は短く切っておき、刺されてもかきむしらず、氷などで早めに冷やす
- 腫れた部分に水素水のスプレーをかけてもかゆみに効果がある
- 換気では網戸にし、網戸自体にも虫よけスプレーをかけるのも有効
- 蚊は川などの水辺、森林、草地などの自然な豊かなところに生息する
- 夏場のキャンプやアウトドアではとくに万全の対策をする
蚊アレルギーは感染症
蚊アレルギーは「EBウイルス」と呼ばれる、ヘルペス属のウイルスの感染が原因で起こると言われています。
EBウイルスは、一度感染するとリンパ球のひとつであるB細胞に潜伏し、以来は生涯にわたって体内から排除されることなく、体内に潜伏し続けます。
日本では20歳になるまでに90%以上の人が感染するウイルスであり、いわゆる不顕性感染というもので、感染しても無症状か風邪のような症状を起こしたのち自然治癒します。
基本的にはあまり心配のないウイルスです。
EPウイルスの感染率
- 1歳…12.5%
- 2歳…60%
- 20歳まで…90%以上
ヒトの白血球の一種であるリンパ球には、B細胞、T細胞、NK細胞の3種類がありますが、EBウイルスがB細胞だけではなくT細胞やNK細胞にも感染することがあります。
EBウイルスがT細胞やNK細胞にも感染すると、感染した細胞が増殖します。
この状態で蚊にさされることで、発熱やリンパの腫れといった症状がでる「慢性活動性EBウイルス感染症」が引き起こされます。
しかし、基本的にはEBウイルスに感染した人であっても、ほとんど発生することが少ない病気です。
蚊アレルギーは「蚊刺過敏症」と呼ばれ、慢性活動性EBウイルス感染症と蚊アレルギーの関係性は明確にわかってはいませんが、慢性活動性EBウイルス感染症はとてもめずらしい病気です。
思春期や成人以降に、唾液などで初感染すると35~50%が重い症状を引き起こす可能性があります。
蚊アレルギーの症状
普通なら蚊に刺されると起こる症状は、赤く腫れたり痒みや水ぶくれができるといったくらいがほとんどです。
しかしEBウイルスが免疫を司る細胞に感染すると、熱が出たりリンパの腫れといった症状として現れることがあります。
10~20年の経過中に症状が悪化したりすることもあるそうです。
蚊刺過敏症の症状一覧
- ぼっこりとえぐれるくらいの腫れ
- 発熱やだるさなどの全身の症状
- リンパの腫れ
- じんましん
- 血泡(血豆のような症状)
- 水ぶくれ
- じくじくやただれ(潰瘍、壊死)
- 下痢
- 血尿
- 倦怠感
かゆみや腫れはもちろんのこと、EBウイルスが感染している場合、合併症として悪性リンパ腫や血球貪食症候群などが起こる可能性があります。
もし蚊にさされて頻繁に高熱などの症状が出るようだったら、早めに検査を受けることが大切です。
全身症状が伴っていないなら蚊アレルギーではないので、虫刺されとしての対処をしましょう。
この病気は「蚊アレルギー」という名前がついているものの、EBウイルスの感染によって起こるので、正しく言えばアレルギーとは違う病気です。
蚊刺過敏症はウイルス感染が原因であるという事実が知られる前に、蚊に対する強いアレルギー反応が皮膚に出て目立ったために、先に「蚊アレルギー」という名前が広まってしまったのです。
蚊にさされたときの反応のタイプ
通常、蚊に刺されると患部が赤く腫れ上がりますが、早めに反応が出るタイプと遅れて反応が出るタイプがあります。
< 即時型アレルギー反応>
蚊に刺されて15分以内に起きる痒みや赤み、腫れのタイプで、直後に起こる反応のことです。
青年期以降は即時型アレルギーになる人が多く、刺された直後だけかゆくなるという特徴があります。
< 遅延型アレルギー反応>
蚊に刺されて1、2日後に起きる痒みや赤み、腫れのタイプで、遅れて起こる反応のことです。
乳児から幼児に多く、真っ赤に腫れ上がったりかゆみが収まらないといった症状が出ます。
子供は体温も高いので蚊にも狙われやすく、EBウイルスに感染しているとじんましんや発熱といった重症を引き起こす可能性があります。
遅延型では水ぶくれが見られることもあり、もし蚊にさされただけで腫れ上がりが目立つ場合は早めに検査を受けてみましょう。
< 即時型と遅延型の両方>
刺される回数が増えると、まずは初めに即時型としてすぐに痒みがでるようになります。
続いて時間が経つと遅延型の反応が出るようになり、両方の反応を持ち合わせたパターンです。
主に小学生くらいの年代に多いパターンです。
< 無反応>
蚊にも何度も刺されると、だんだん反応が出なくなってくるので、年をとって高齢になってくると反応が出なくなります。
また、蚊に刺される回数が多いと、早い時期から無反応になることもあるそうです。
タイプそれぞれの薬について
蚊に刺された箇所に効く薬は主に2種類あります。
- ステロイド剤の配合された薬:炎症を抑える
- 抗ヒスタミン剤が主成分の薬:かゆみを抑える
< 即時型アレルギー反応に合う薬>
症状が即時型アレルギーだけのものであれば、かゆみが出るのは蚊に刺されて直前だけなので、抗ヒスタミン剤が主成分の薬で大丈夫でしょう。
直後のかゆみさえ抑えることができれば、その後は再発しないので、一時的に抑えるだけで十分です。
< 遅延型アレルギー反応に合う薬>
症状が遅延型アレルギーであるならステロイド剤が配合された薬を選びましょう。
乳幼児はとくに遅延型アレルギー反応のみが起こることが多いので、刺されたときにはかゆみがなくても、後々出てくることが多いです。
< 即時型と遅延型の両方がある場合に対しての薬の使い方>
小学生くらいの年代であると、即時型と遅延型の両方のアレルギー反応が出ます。
なので、ステロイド剤と抗ヒスタミン剤の両方を使い分けることをお勧めします。
刺された直後には抗ヒスタミン剤の薬をつけ、翌日のかゆみに備えてステロイド剤が配合された薬も塗っておきます。
遅延型も兼ね備えていると、直後のかゆみが収まっても後日かゆみが襲ってくるので、忘れずに薬を併用しましょう。
薬を選ぶ時のポイント
- 抗ヒスタミン剤主体の薬かどうか
- ステロイドが配合されているか
- ステロイドの強さはどのくらいか
< 「ムヒ」の場合>
- 液体ムヒS2a…弱めのステロイドである「デキサメタゾン酢酸エステル」が使われている。
- ムヒアルファS…同じく「デキサメタゾン酢酸エステル」が入っているので弱めのステロイド。
- ムヒアルファEX…「吉草酸酢酸プレドニゾロン」というステロイドが入っている。市販の中では一番強い。
- 液体ムヒアルファEX…同じく「吉草酸酢酸プレドニゾロン」が入っている。
- ムヒS…抗ヒスタミン薬であるジフェンヒドラミンが使われている。ステロイドは不使用。
- ポケムヒS…ステロイド不使用。ジフェンヒドラミン塩酸塩でかゆみを抑える。
- ムヒ・ベビー…ステロイド不使用。生後一ヶ月から使える。ジフェンヒドラミンが入っている
- 液体ムヒベビー…ステロイド不使用。生後3ヶ月から使える。ジフェンヒドラミン塩酸塩が入っている。
- ムヒパッチA…ステロイド不使用。ジフェンヒドラミンが入っており、かゆみ止めになる。
<その他>
- エマゼン軟膏…酢酸ヒドロコルチゾン配合。弱いステロイド剤。
- ドルマイコーチ軟膏…同じく酢酸ヒドロコルチゾン配合。
- セロナ軟膏…酪酸ヒドロコルチゾンというステロイドが入っている。少し強めなので大人であれば2週間以内に使う。
蚊アレルギーの検査について
検査方法は、EBウイルスが感染していると思われるリンパ球のT細胞、NK細胞、リンパ球の分類、血液検査、肝機能検査、免疫グロブリンなどを測定します。
診断には末梢血中のEBウイルスDNA量を測る事が必要になりますが、大きい病院でもできる場合とできない場合があり、保険適用外の検査で、1万円から2万円ほどになると言われます。
T細胞かNK細胞にEBウイルスが感染しているかどうかを調べ、慢性活動性EBウイルス感染症かどうかを診断します。
もし本物の蚊アレルギーだったらかなり重症になりますので、疑わしいと感じるならまずはお医者さんに検査をしてもらえるよう、お願いしてみましょう。
お医者さんでも知らない場合が多い病気と言われますので、とりあってもらえなかったらできるだけ大きい病院に行くといいかもしれません。
蚊アレルギーの治療法
蚊アレルギーの症状(発熱や強い腫れなど)が出るようになったら、まずは早めに皮膚科を受診することが大切です。
しかし、もともと慢性活動性EBウイルス感染症の日本国内での患者数は、2009年までで年間25人とめったに起こる病気ではありません。
全身反応を伴い、38度を超える高熱が3週間以上続いたり潰瘍を作ったりするので、気づかない間に感染していることはあまりないでしょう。
なので、なんとなく気になって皮膚科を受診しても、99%がただの虫刺されと診断されます。
すると病院では虫刺されに効く薬が処方されます。
- 痒みが軽いとき…抗ヒスタミン、非ステロイド外用薬
- 炎症がひどい時…抗ヒスタミン、ステロイド外用薬
- かゆみが強い時…抗ヒスタミン内服薬
現在では、本物の蚊アレルギー(慢性活動性EBウイルス感染症)であった場合、骨髄や末梢血幹細胞(まっしょうけっかんさいぼう)の移植が唯一治癒の可能な治療法とされています。
しかし成功率は50~70%と低く、進行するほど移植が難しくなり、数年の間に半数が亡くなる病気です。
蚊は危険な感染症を持ち込む原因ともなっていますので、予防するに越したことはありません。
できるだけ蚊にさされないように、きちんと工夫するよう心がけましょう。
蚊が媒体となり引き起こす感染症
病名 | 媒介する蚊 | 病原体 |
デング熱 | ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ | デングウイルス |
ジカ熱 | ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ | ジカウイルス |
チクングニア熱 | ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ | チクングニアウイルス |
マラリア | ハマダラカ | 熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫 |
ウエストナイル熱 | アカイエカ、ヒトスジシマカ、ヤマトヤブカ | ウエストナイルウイルス |
日本脳炎 | コガタアカイエカ | 日本脳炎ウイルス |
フィラリア | ネッタイイエカ | フィラリア線虫 |
黄熱 | ネッタイシマカ | 黄熱ウイルス |
現在でも日本脳炎をもった蚊は発生しており、日本でも感染の機会がなくなっていないという現状があります。
日本脳炎は流行地域に中国やベトナム、朝鮮半島や台湾などがあり、これらの国に行くときはあらかじめ予防接種を行うことをお勧めします。
日本脳炎のリスク
一般的に日本脳炎のウイルスに感染した場合は、およそ1000人に1人が日本脳炎を発症し、そのうち20~40%の方が亡くなってしまうと言われています。
その上生存者の45~70%に精神障害など、後遺症が残ってしまうと言われますが、ワクチンの接種を行うことで日本脳炎にかかるリスクを75~95%減らすことができます。
蚊に刺されることを予防するための方法は以下の記事でまとめていますので、興味があったらご覧ください。
⇒蚊の部屋での対策法!屋外や庭、ガーデニングでは?寝るときはどうするか
地球温暖化により、日本も亜熱帯化が進んできていますので、蚊に刺されたときのリスクというのもじわじわと高まってきている現状があります。
感染症の概要
病名 | 概要 |
デング熱 | 全世界において、一年間で1億人が発症していると言われています。 発熱や発疹を主な症状とする種類と、デング出血熱と呼ばれる重症の種類があります。 前者の場合は発熱や頭痛、筋肉痛などを伴い3~4日後に全身に発疹、症状は3~7日程度で回復します。 しかし出血性である場合、経過は同じですが発熱から2~7日後に血便などの消化管出血や、出血が止まらないなど、出血傾向が現れ重症に陥ると言われています。 |
ジカ熱 | 近年は中南米で発生しています。日本国内では感染した例はありませんが、海外からの輸入症例が2013年以降に3件報告されています。 感染しても全員が発症するわけではなく、症状がない、あるいは症状が軽いため気づかないこともあるようです。 軽度の発熱や発疹、筋肉痛、頭痛などが主な症状ですが、症状は軽く、2~7日で治まります。 |
チクングニア熱 | 日本国内での感染や流行はありませんが、アフリカや南アジア、東南アジアなどで感染が確認されています。 媒介する蚊がデング熱と同じであるため、厚生労働省も蚊に刺されない予防を工夫するよう呼びかけています。 症状は8割程度に発疹がみられ、倦怠感や頭痛、鼻血や歯肉出血といった出血傾向が見られることがあります。 症状はデング熱よりも強いと言われています。 |
マラリア | 外国で感染し、日本で発症する例では、一年で50人前後と言われています。 種類によっても症状は異なりますが、発汗や悪寒を伴うことは共通しています。 死亡例もありますが、日本国内での発病はありません。 潜伏期間は2週間程度で、3、4日ごとに高熱を繰り返します。薬の効きにくいマラリアもあり、注意が必要です。 熱帯熱マラリアの場合は頭痛や倦怠感、筋肉痛、関節痛などを伴います。 流行地へ行く場合は、予め予防薬を病院で相談しましょう。 |
ウエストナイル熱 | 現在ではウイルスの日本国内への侵入は確認されていませんが、航空機などから侵入する可能性が危惧されています。 2003年にはほぼアメリカ全土に広がり、264人が亡くなっています。 潜伏期間は、蚊に刺されてから3~15日と言われ、3~6日間ほど発熱や頭痛、めまい、発汗、発疹の症状が見られます。 脳炎型になると死亡率は3~15%となり、高齢者に多い傾向があります。 |
日本脳炎 | 世界において、一年間で3~4万人ほどが発症しています。 5~15日の潜伏期間のあと、頭痛や発熱、腹痛、吐き気、39~40℃の高熱となった場合は、痙攣や昏睡状態、意識障害、最悪の場合死に至ることがあります。 一般的には患者の約1/3が死亡し、免れても約半数近くが知能障害などの後遺症を残すと言われています。 豚やサギなどが日本脳炎ウイルスの増幅動物と言われます。 |
黄熱 | 熱帯アフリカと中南米の風土病で、潜伏期間は3~6日。突然の頭痛や吐き気、発熱、虚脱、悪心などが見られます。 3~4日ほどで症状が軽くなりそのまま回復する例もあります。 重症化すると数時間から2日後に再発し、下血や子宮出血、黄疸、黒色嘔吐、鼻からの出血が見られ、死亡率は30~50%と言われています。別名「黒吐病」。 |
蚊のアレルギーについてまとめ
蚊アレルギーは滅多なことでは起こる病気ではありませんが、もし蚊に刺される度に重度の症状が続くようだったら疑うべき病気です。
普段から蚊に刺されないように気をつけることも一番の予防法となりますので、よろしければ以下の記事もご覧くださいね。
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