お中元とは、日ごろお世話になった人に対して贈り物を届け、感謝の気持ちを伝えるための行事です。
「お中元」という言葉には、由来が複数混合されてできており、昔からの行事が関係しているようですよ。
この記事では、お中元の元になったと思われる
- お中元の由来となった「3元」について
- 盂蘭盆会と呼ばれる行事について
- 盆礼について
と、後半部分ではお中元とお歳暮の違いについて触れています。
- お中元とお歳暮の送る時期の違い
- お中元とお歳暮の意味合いの違い
- 贈るときの品物について(ふさわしいもの・避けたほうがいいもの)
- お中元とお歳暮ののし書きの違い
- 両方贈る必要はあるか?
- どんな関係の人に贈るか?
- 渡す時のマナー
なお、お中元の時期、マナーなどについてより詳しく知りたい時は、こちらの記事へどうぞ。
⇒お中元の時期を地域別で紹介!いつからいつまで?マナーも解説!関東、関西、北海道など
⇒お中元でのお礼状の例文を紹介!個人で上司に書くときや残暑見舞い・梅雨時期の例について!
記事内容(項目をクリックすると飛べます)
1、お中元の由来
もともと「お中元」は道教に由来する「中元」がもとと言われ、三元のひとつです。
三元(さんげん)とは、1年の中で上元(じょうげん)・中元(ちゅうげん)・下元(かげん)の3つの日の総称である。雑節とすることがある。
元々は中国の道教の行事である。三元を司る3神を三官大帝という。三官大帝は龍王の3人の娘と人間の陳子椿とのあいだに生まれた、龍王の孫である。彼らの誕生日が、三元として祝われるようになった。(引用:Wikipedia…「三元」)
三元では一年を3つに分け、いずれの日もほぼ満月の15日に当たります。
三元 | 旧暦の日付 | 新暦の日付 |
上元 | 1月15日 | 2月上旬~3月上旬 |
中元 | 7月15日 | 8月上旬 |
下元 | 10月15日 | 11月上旬 |
- 上元…中国では元宵節や元夕などとも呼び、この日に小豆粥を食べるとその年の疫を避けられると言われている。
- 中元…人間贖罪の日として、のちに死者の罪を赦すことを願う行事も催されるようになった。
- 下元…古代の中国において、かつては先祖の霊を祀る行事だったが、後に災厄を免れるよう願う日となった。
(※Wikipedia「三元」を参考にしております。)
上元、中元、下元を司るそれぞれの神さま
11世紀ごろ、龍王の娘である三姉妹が陳子椿(ちんしちん)に恋をすることで、姉妹のそれぞれが男児を産みました。
これが三元を司る神さまで、龍王の孫に当たります。
それぞれが神通力や法力を持ちあわせていたため、元始天尊により役割を与えられたといいます。
- 上元…天官賜福大帝の誕生日。天の神々を統率し、人々にさまざまな福を与えた。
- 中元…地官赦罪大帝の誕生日。地の神々を統率して人間の様々な罪を赦した。
- 下元…水官解厄大帝の誕生日。水の神々を統括し、人間の様々な厄災を取り除いた。
お盆の元となった「盂蘭盆会」とは?
中国仏教において、盂蘭盆会(うらぼんえ)は7月13日~7月16日に行われる行事のことで、元は旧暦の15日を中心に行われていました。
この行事では祖霊の供養をしますが、改暦以来は、新暦に合わせて行われているところと、旧暦のまま行われているところに分かれているようです。
サンスクリット語の「ウランバナ」、ペルシャ語の「ウラヴァン(霊魂)から来ている言葉だとされ、「逆さ吊り」という意味があるのだそうです。
死者が地獄で受けている逆さ吊りの苦しみから救うための行事が盂蘭盆会だと言われています。
現在でも、祖霊が地獄の苦しみから救われるようにと、盂蘭盆会が行われています。
盆礼について
かつて、1年を半分に分けて前期の始まりをお正月、後期の始まりをお盆として祖霊を祀る行事としていました。
お盆では、健在である親などに対して、贈り物をして祝う「生御霊(いきみたま)」の祀りを行っていたそうです。
盆では親や仲人、世話になった方々に対してうどんやそうめん、米などを贈る「盆礼(ぼんれい)」という風習があり、7月の満月の日である15日に行われていました。
ちなみに、お正月では祖先の霊を祀っていたそうです。
「お中元」は盂蘭盆会、盆礼、道教の由来が混ざっている?
「中元」、「盂蘭盆会」、「盆礼」それぞれが7月15日だったので、現在ではこれらが融合してしまい、7月15日に食べ物を贈ることがお中元の定番となってしまったようです。
<旧暦の7月15日を現在の日付にすると>
年 | 新暦 |
2011年 | 8月14日 |
2012年 | 9月1日 |
2013年 | 8月21日 |
2014年 | 8月10日 |
2015年 | 8月28日 |
2016年 | 8月17日 |
2017年 | 9月5日 |
盆礼は生きている両親や世話になった人に対して健在であることやお互いの無事を祝い、贈り物をするので「生盆」とも呼ばれます。
逆に盂蘭盆会は地獄の死者が飢えや乾きから救われるようにと、飲食物をお供えします。
これらに中元を司る地官赦罪大帝の誕生日が重なって、現在のお中元が成り立ったと考えられます。
たまたま3つの日付が同じ7月15日だったので、混合されて、世話になった人々に贈り物をする現在のお中元の習慣ができたとされます。
<お中元の由来とされる7月15日の行事>
- 中元…「お中元」の名前の由来。さまざまな罪が赦される贖罪の行事、「中元」を司る地官赦罪大帝の誕生日。
- 盂蘭盆会…死者が飢えや乾きから救われるようにと供養する行事。現在でいうお盆の原型。
- 盆礼…「生盆」とも呼ばれ、生きている世話になった人に対して贈り物をする行事。
2、お中元とお歳暮の違いは?
さて、お中元の由来はこれでわかりましたが、お中元とよく似た行事にお歳暮があります。
ここではお中元とお歳暮の違いについて、詳しく見ていきましょう。
お歳暮の由来
お歳暮はその名の通り、「年の暮れ」、つまり年末(歳暮、せいぼ)を現す言葉です。
年越しの時期にある御霊祭に由来するとされています。
鮭やするめ、数の子、魚介類といったものを祖霊に供えたとき、供物を嫁ぎ先からお嫁さんの実家に贈ったならわしが残ったことが始まりです。
毎年、年の暮れが近づくと、一年間お世話になった人に、感謝を込めて贈り物を持参する習慣ができあがりました。
これを歳暮回り(せいぼまわり)と呼ぶようになり、次第にこの時の贈答品をそのまま「御歳暮」と呼ぶようになったとのことです。
こう知ると、お歳暮はお中元とくらべてストレートに贈り物をする習慣に見えますね。
お中元とお歳暮の大きな違いは送る時期
お中元といえば、全国的に年の中頃に行われる行事であり、7月の上旬から8月の下旬にかけて行われる行事です。
>>お中元の時期を地域別で紹介!いつからいつまで?マナーも解説!関東、関西、北海道など
一方、お歳暮は年の暮れに贈るので、12月の上旬から12月25日ごろまでに贈るとされています。
- お中元は7月上旬から8月の下旬にかけて行われる
- お歳暮は年の暮れに行われ、12月の上旬から12月25日ごろまでに行われる
※地域によって若干の違いがあります。
お中元とお歳暮の意味合いの違い
どちらも感謝の気持ちを込めて贈ることには共通していますが、ニュアンスが少し違っています。
- お中元は年明けから旧暦の7月15日まで、半年間お世話になったお礼。夏の暑さで体調を崩していないか、伺うような意図もある。
- お歳暮は一年間の締めくくりとして、今年の感謝の気持ちと挨拶を伝える。「来年もどうぞよろしくお願いします」という意味もある。
お中元とお歳暮の贈る品物の違い
基本的には、その時期に合ったものを贈ると喜ばれるでしょう。
たとえば夏場には水ようかんやゼリーといった清涼感を味わえる食品を贈ると喜ばれます。
お歳暮であれば人が集まる年越しの時期に、ハムやドリンク、鍋物の具材といった、みんなでゆっくり食べられるものがいいでしょう。
<お中元の贈り物例>
- 水ようかん、ゼリー、ジェラート、シャーベットといった涼しくなるスイーツ(冷菓)
- 牛肉、うなぎ(スタミナが付くもの)
- ビール、フルーツジュース
- 旬のフルーツ(モモ、マンゴーなど)
- そうめんなど
<お歳暮の贈り物例>
- 肉、かになどの鍋物の具材
- ハムやソーセージ
- 個包装のスイーツ(クッキー、マカロンなど)
- おせち料理に使える食品(数の子など)
- 温まる入浴剤
- 日本酒、ワイン
全体的に、お歳暮のほうが高価になるイメージでしょうか?
一年間の感謝が込もっているので、その分かもしれませんね。
商品券や金券は、「金額のわかるものを贈り物にするのはどうなのか?」と、マナー的にはどうやら賛否両論があるようです。
また、ここに上げたもののほかにも、あなた自身が美味しさや良さをぜひ知ってほしいものがあればその品を贈るといいですね。
地方の特産品なども喜ばれますよ。(^^)
お中元やお歳暮で避けたほうがいいもの
食品を送る場合、相手の好き嫌いやアレルギー、病気がないか確認しておきましょう。
また、保存の効かないものもたくさん贈らないほうが無難です。(この場合は量が少なくて質の良いものにしましょう。)
絵画やインテリアに関する小物なども、趣向が分かれる可能性があります。
これらは相手の好みが分かっているなら贈ってもいいですね。
- 食品は相手の好き嫌い、アレルギー、病気を確認しておく。
- 保存の効かないものは贈らないか、量より質の良いものを贈る。
- 絵画やインテリア小物は、相手の好みがわかっていれば贈って良い。
お中元とお歳暮、のしの書き方の違い
お中元やお歳暮ののしの書き方についてですが、表書きは時期によって変わります。
お中元のみ関東と関西で期間が違うので気をつけましょう。
<お中元ののし書き>
【関東】
- 7月1日~7月15日:お中元、御中元
- 7月16日~8月7・8日(立秋まで):暑中お見舞い(目上の人へ:暑中御伺)
- 立秋~8月末:残暑お見舞い(目上の人へ:残暑御伺)
【関西】
- 7月15日~8月15日:御中元
- 8月16日~8月末:残暑お見舞い(目上の人へ:残暑御伺)
<お歳暮ののし書き>
- 12月始め~12月20日:お歳暮、御歳暮
- 12月21日~年末まで:寒中お見舞い(目上の人へ:寒中御伺)
- 1月1日~1月7日:御年賀
- 1月8日~2月4日(立春):寒中お見舞い(目上の人へ:寒中御伺)
※お歳暮は、期間が地域で変わりないので、12月の下旬までに手元に届けるといいでしょう。
もともとお歳暮は、お中元のように正確な時期がないとも言われますので、12月の後半を目安にするといいですね。
また、「暑中お見舞い」の見舞うは目上の人へ対し労をねぎらうという意味になるので、失礼に当たります。
なので、その場合「暑中御伺」といった書き方をしましょう。
今年(2016年)の立秋は8月7日です。
沖縄や九州は、関東や関西と比べて期間が少し特殊なので、詳しいことは以下の記事で確認してください。
>>お中元の時期を地域別で紹介!いつからいつまで?マナーも解説!関東、関西、北海道など
お中元とお歳暮、両方贈る必要はある?
特別両方贈らなければならないというルールはありません。
もしどちらか一方を贈るとすれば、お歳暮にしましょう。
なぜならお歳暮は一年間の締めくくりとして、挨拶とお礼を現すものなので、まとまった感謝を示しやすいからです。
お歳暮だけでも、相手には十分に感謝が伝わるでしょう。(^^)
気持ちを大切にするのがなによりも大事なことなので、負担になるくらいなら片方にしてもマナー違反ではありません。
もし、お中元やお歳暮を贈らないことがどうしても気になるというのなら、寒中お見舞いや残暑お見舞い(暑中お見舞い)の手紙を出すと良いでしょう。
- お中元とお歳暮は両方贈らなくても良い
- どちらか一方なら、まとまった感謝を示しやすいお歳暮
- 贈らないことが気になるなら、寒中お見舞いや暑中お見舞いを出すと良い
お中元とお歳暮は毎年贈るもの
お中元やお歳暮は、「これからもお世話になります」という意味があります。
なので、普段からお付き合いのある人に中途半端に一度だけ贈るのはマナー違反となります。
一度だけお世話になった人や、一時的でも感謝を現したい人には、「御礼」として品物を贈りましょう。
継続的な関わりがあるかどうかわからない場合も、中途半端になるのを避けるため、御礼として贈るといいですね。
そうすることで、自分だけではなく、相手にも配慮することになります。
- お中元とお歳暮はいつもお世話になっている人に毎年贈るもの
- 一度だけお世話になった人・一時的でも感謝を伝えたい人には「御礼」として贈る
- 継続的なお付き合いになるかわからない人にも、中途半端になるのを避けるため「御礼」がよい。
お中元とお歳暮はどんな関係の人に贈ると良いか?
お中元やお歳暮はそれまでお世話になった人、そしてこれからもお世話になる人に贈るのが適切です。
この2つの条件を満たしている人には贈ったほうがいいですね。
<例>
- 親戚
- 両親(遠方の場合)
- 会社の上司
- 仲人さん
- 親しい友人
- 先輩、先生(恩師)
あくまで感謝の気持ちを現すために贈るものなので、誰に贈ればいいかという正しい決まりはありません。
※あちこちに贈るのではなく、普段からのお礼をきちんと伝えたい相手に贈りましょう。
そうしなければ、相手も気を使うはめになり、負担をかける可能性があります。
<お中元・お歳暮を贈る相手のポイント>
- これからも関り合いがある相手か?
- 自分が本当に感謝を伝えたい相手か?
- 毎年続けて贈る気持ちがある人か?
- 相手が負担に思わないか?
<相場>
贈る相手 | 相場 |
友人・知人・親戚 | 3000円~5000円 |
仲人・上司・両親 | 5000円前後 |
特別お世話になった人 | 5000円~10000円 |
仕事関係 | 3000円~10000円 |
※相手と自分の関係性に見合った金額にしましょう。
お中元とお歳暮を渡す時のマナー
品物を渡す時、手渡しと配送の二種類がありますが、それぞれのマナーについて知っておきましょう。
<手渡しのマナー>
- 電話やメールなどで、伺う日時を相談します。玄関先でお渡しする趣旨を伝えると、相手の負担にならず済むでしょう。
- 正しくは風呂敷に包むのですが、無理ならデパートや百貨店での購入時に頂いた紙袋に入れて持参します。
- 品物は袋から取り出し、時計回りに90度に回して、のし書きの文字が相手に向くよう差し上げます。
※食事の時間帯や、夕食の支度をする時間帯、夜間や早朝など相手の迷惑になる時間は避けましょう。
※持参の場合、紙袋(風呂敷)に入ったまま手に渡さないようにしましょう。
【お中元のあいさつ】
- 「日頃よりお世話になっております。お口に合えばと思いますが、夏のご挨拶をお持ちしました。」
- 「普段からお心遣いをありがとうございます。普段の感謝を伝えに参りました。」
【お歳暮のあいさつ】
- 「今年は大変お世話になりました。一年間のお心遣いへのお礼のしるしにお持ちしました。」
<配送の場合>配送の場合は、何も伝えずに贈るのではなく、予め相手に送り状を届けておくのがマナーです。
>>お中元でのお礼状の例文を紹介!個人で上司に書くときや残暑見舞い・梅雨時期の例について!
仲の良い関係であれば電話やメールでもいいですが、とくに生ものや生鮮食品を届ける場合は伝えておくといいですね。
お中元やお歳暮に、添え状を同封し、気持ちを書いて届けてもいいでしょう。
また、お中元を受け取った時のマナーはこちらの記事でまとめています。
>>お中元の時期を地域別で紹介!いつからいつまで?マナーも解説!関東、関西、北海道など
お中元の由来・お歳暮との違いまとめ
これでお中元の元になった行事とお歳暮との違いについてわかりました。
まとめると、
- お中元は「中元」を司る地官赦罪大帝の誕生日。
- 盂蘭盆会は現在のお盆の原型で、地獄の死者が飢えや乾きから救われるようにと供養する行事。
- 盆礼は健在である世話になった人に対して贈り物をする行事。
- 「地官赦罪大帝の誕生日」「盂蘭盆会」「盆礼」、これら3つがすべて7月15日だったので、混ざって現在の「お中元」の由来になったと言われる。
- お歳暮は、年の暮れに一年間お世話になった人に贈り物をする「歳暮回り(せいぼまわり)」が由来。
- お中元とお歳暮は、贈る時期、意味合い、贈る品物が違っている。
- のし書きはその季節によって書き方が違う。
- お中元とお歳暮は、必ずしも両方贈る必要はない。
- お中元(お歳暮)を贈るなら、毎年贈るのにふさわしい人に差し上げること。
- お中元やお歳暮は、それまでお世話になった人、そしてこれからもお世話になる人に贈る。
- 手渡しと配送それぞれでマナーがある