毎年訪れる十五夜では、お月さまを眺めて風情を楽しむ日として定着しています。
しかし、そもそもなぜ十五夜でお月見をするのか、お団子やすすきをお供えするのか知っていますか?
もしあなたが子どもにわかりやすく伝えたいと思っているなら、まずは十五夜がなぜ行われるのか、またお供えするものにこめられた意味を初めに知っておきましょう。
なお、十五夜は毎年満月になるわけではありません。
詳しくは以下で書いていますので、先に知りたい場合は以下のページでどうぞ。
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十五夜を行う意味について
十五夜といえば、満月を眺めながらお団子を食べたりすすきを飾ったりすることが定番となっています。
現在は太陽の公転を基準とした新暦(グレゴリオ暦)が使われていますが、旧暦が使用されていた1872年ごろまでは月の満ち欠けを基準にして、農耕を行っていました。
欠けのないまん丸の満月は、豊作や豊穣の象徴であったとされており、1年の中でもとくに月が綺麗に見える十五夜は豊穣を祈るための大切な日として扱われていたのです。
月はその日その日で様子が変わり、満ち欠けがある様子や、農作物が月の満ち欠けにつられて成長する様子から、昔の人は「農作物の収穫」「物事が実るように」「祖先や神さまと繋がれるように」といった意味を込めてお月見を行ったのだそうです。
月への感謝
農作物の収穫には、日が沈み暗くなってもかかることがあります。
昔は、電気のような便利なものがなかったため、空から照らしてくれるお月さまの光は、手元が見えるようになる助けとなっていたのです。
豊作を願い、収穫への感謝を捧げる
秋はたくさんの農作物がとれる季節ですが、とくに昔の人にとってお米の収穫は大切なものでした。
お米の出来がよくなるようにと豊作を願い、収穫が無事にできたものには感謝をするというのが、お月見の行事につながっていると言われています。
月を愛でる
昔から、日本では月を眺めて楽しむ習慣がありました。
とくに十五夜にあたる月は、1年のなかでもとくに美しいと言われており、このことからお月見につながっていったとも言われています。
月を見ながらお酒を楽しむことの由来…観月の宴
十五夜とは本来、満月のことを指しますので、1年に12回、または13回巡ってきます。
(※実際には、十五夜の日は満月から1~2日ズレることが多いです。詳しくはこちら。)
旧暦の8月は1年の中でも最も空が澄んでいて、月が美しく見える季節とされていたので、平安時代から「観月の宴」が行われていたのです。
日本では月を見ながらお酒を飲むことが定着していますが、大々的に観月の宴を開いた玄宗皇帝にちなみ、殿上人(天皇の住まいのひとつである、清涼殿にあがることを許された人)たちがお酒を飲むことを楽しんだと言います。
中国からお月見の祭事が伝わると、平安時代の当時は直接お月さまを見るのではなく、舟に乗って水面に浮かぶ月明かりを楽しんだり、池や杯に浮かぶ月を見て、風情を楽しんだと言われています。
これが、江戸時代に入ると「収穫祭」として広まるようになったのです。
現在でも仏教の寺院では、豊作を願い、月へ供物をお供えする満月法会が行われるところも存在します。
日本独自のお月見である旧暦9月13日の「十三夜」
日本での月を愛でる習慣は縄文時代のころからもあったといいます。
奈良時代に中国から伝わったお月見と、もともと日本にあったお月見が一緒になり、8月15日だけではなく9月13日にもお月見をするという、日本独自のお月見が生まれたのです。
旧暦8月15日のお月見は十五夜といいますが、旧暦9月13日の月を「十三夜」と呼びます。
この旧暦9月13日にお月見を行う習慣は日本だけで、中国にはありません。
十三夜の由来はいくつか存在するようですが、宇多上皇が始まりであったとされています。
初めは十五夜と同じように宮中の歌会として行われていましたが、室町時代のころからお供え物やお花が供えられるようになったといいます。
この頃は、ちょうど旬を迎える栗や大豆を供えるので、十三夜を「栗名月」または「豆名月」と呼ぶこともあります。
お月見は「十五夜」が先に訪れるので、十五夜に対して十三夜は「後の月」とも呼ばれることもあります。
十五夜と中秋の名月
旧暦の8月15日を「中秋の名月」といいますが、「中秋」は秋の真ん中のことを指すので、ちょうど旧暦の8月15日が中秋になります。
なお、「中秋の名月」と「仲秋の名月」の違いは以下の項目で書いています。
<旧暦での季節>
- 1~3月:春
- 4~6月:夏
- 7月~9月:秋
- 10月~12月:冬
「中秋」は「秋」の「中」ごろ。
旧暦での秋は7月、8月、9月、なので、「中秋」とは旧暦の8月のことを指すのです。
「中秋の名月(十五夜)」はこうして旧暦8月15日の夜の月のことを指すようになりました。
ちなみに旧暦8月15日は新暦で9月7日から10月8日頃にあたります。
なので、毎年十五夜の日付は変化するのですね。
「仲秋」ですが、昔は季節の真ん中に「仲」をつけて呼んでいました。
- 春の真ん中の2月:仲春(ちゅうしゅん)
- 夏の真ん中の5月:仲夏(ちゅうか)
- 秋の真ん中の8月:仲秋(ちゅうしゅう)
- 冬の真ん中の11月:仲冬(ちゅうとう)
※仲秋の名月については、先にご案内した項目を見て頂ければと思います。
それ以外の月待ちについて
- 十日夜(とおかんや)…旧暦十月十日の月。詳しくはこちら。
- 十六夜(じゅうろくや、いざよい。十六日月)…陰暦の8月16日の月で、十五夜の翌日の月をさす。
- 立待月(たちまちづき、十七日月)…満月の二日後の月のこと。月の出を立ったまま待つことから。
- 居待月(いまちづき、十八月)…満月の三日後の月をさす。立ったまま待つのに疲れて、座って待つことから。
- 臥待月(ふしまちづき)寝待月(ねまちづき)…満月の三日後の月を指す。十九日月とも言う。月の出が遅く、寝て待つことから。
- 更待月(ふけまちづき、二十日月)…亥中の月 (いなかのつき)とも言う。満月の五日後の月を指す。月が夜を更けないと出てこないため。
- 二十三夜(にじゅうさんや、二十三日月)…真夜中に出てくる下弦の月。
- 二十六夜(にじゅうろくや、二十六日月)…三日月が反転した形の月。朝の3時頃にのぼる。
- 有明の月(ありあけのつき)…朝にも沈まず、残っている月
- 晦日の月 (みそかのつき)…「晦日」はその月の最後のこと。新月が近く、出てこない月を指す。ありえないことを例えるときに使われることがある。
- 雨夜の月 (あまよのつき)…雨の夜の月をさし、眺めることができない。存在しても見えないものを例えて使われる。
- 昼の月 (ひるのつき)…昼の明るいうちに、薄く空に見える月を指す。見えていても存在が薄く感じることを例えて使われる。
月待ちとは?
月待ちは、ある特定の形の月が出るのを待って、人々が集まりお供え物をしたり祈ったりする行事のことを指します。
それぞれの月を指して、十六夜待ち、二十三夜待ち、二十六夜待ちなどと呼びます。
16世紀のころ、京都の公家社会において二十三夜待ちが行われていたと言われており、この行事が一般にも広まっていったとされています。
月待ちでとくに重視されていたのは正月や5月、9月の月、または二十三夜(下弦の月)でした。
下弦の月が重視されるのは、満月の後に訪れる半月の形が大切なものと思われていたためと考えられています。
民間においての月待ちは、月齢周期と女性の月経周期が関連付けられて、子育てなどに対して願う女性の集まりであることが多いです。
十五夜のすすき・団子などのお供え物の意味
お月見にお供えものをするのは、「収穫祭」の役割から来ているとされています。
始めの頃は、9月に収穫される芋をお供えしていましたが、後々になってお米を使ったお団子がお供え物として定着するようになりました。
月は風情を感じさせるだけではなく信仰としての対象でもあり、十五夜は収穫に感謝をする意味もあるので、秋に収穫したものを月にお供えしたのです。
お月さまにお供えするものには、おなじみのお月見団子のほか、里芋やススキといったものがあります。
これらの意味を1つずつ見ていきましょう。
月見団子
穀物が収穫できたことを月に感謝し、米を粉にして丸めることで月に見立てたのが月見団子の由来です。
月見団子には数にいくつかの説があり、それぞれ意味があると言われています。
<月見団子の数の説>
- 12個の月見団子:その年に出た満月の数をお供えする説です。普通であれば12個ですが、閏年には月が13回出るので、このときは月見団子も13個お供えします。
- 15個の月見団子:十五夜に由来して、お団子も15個お供えする説です。並べるときは下から数えて9個、4個、2個と並べていきます。
旧暦が使用されていた昔は、月の満ち欠けをひと月として、農耕などの日々も成り立っていました。
満月が何回あるか、新月はいつか、など、月に関係することにはとても大切な意味があったので、団子の数にも反映されていたのです。
お団子を積み上げて、ピラミッドのように山盛りにするのは、お供え物を高く積み上げることで、感謝が空のお月さまに届くようにという意味が込められています。
里芋、さつまいも
イモ類も秋に収穫できる作物なので、里芋やさつまいもといった芋をお月さまにお供えします。
十五夜にはこうして芋をお供え物に使うことが多いことから、「芋名月」とも呼ばれています。
この時期には芋だけではなく、ブドウなどのたくさんの実りがありますので、旬の野菜や果物など、食材も一緒にお供えしてもいいでしょう。
とくにツルが巻くものは、月と人が深くつながれるようになると言われており、縁起がいいのです。
十五夜はもともと、農作物の収穫や神さまと繋がれるように、との意味を込められて行われています。
しばらくお供えした後、お供え物を食べるとさらに結びつきが強くなります。
日本には、神さまにお供えしたものには良いエネルギーが宿るという考え方があるので、お供えした作物や果物はぜひ美味しくいただきましょう。
ススキ
ススキは神さまの依り代(神霊が寄り付く対象になるもの)と言われており、稲に穂が実る前に、稲穂に見立てたススキを飾るようになったといいます。
ススキは切り口が鋭いので、魔除けとしての役割もすると言われており、お月見が終わっても軒先に吊るしておくこともあるそうです。
ススキを飾ると一年の間、病気をしないという話です。
お月見ではススキは定番ですが、そういえば、私が小学生の頃もクラスメイトたちがススキを教室に持ってきていましたね~。
萩
萩は神さまの箸としての役割があったようで、すすきと同じように邪気を祓う力があったと考えられています。
村上天皇(926年〜967年)が萩で作った箸で里芋に穴をあけ、その穴から月を覗いたり、皇女和宮(1846年〜1877年)が萩の箸で月見の饅頭に穴をあけてそこから月を眺めたという話もあるようです。
稲穂や「秋の七草」
お月見は神さまへ収穫の感謝をこめて行う意味もあるので、稲穂をそのまま飾ることもあります。
また、秋に見られる季節の草花(萩を含む)も飾られることがあります。
<秋の七草>
- 萩(ハギ)
- 薄(ススキ、オバナ)
- 桔梗(キキョウ)
- 葛(クズ)
- 藤袴(フジバカマ)
- 女郎花(オミナエシ)
- 撫子(ナデシコ)
「お月見」の意味を子どもにも分かるように説明するなら?
十五夜そのものの(月を見る)意味を説明するなら
十五夜の月は、1年の中でもとくに綺麗だと言われますので、昔からお月見が行われていました。
なので、
- 「お月見のころの月は、一年の中でもとくに綺麗に見える月だから、昔からゆっくりと眺められていたんだよ」
といった風に伝えてみましょう。
こちら、お子さんと折るのにいいと思います。
<折り紙でのお月見団子の作り方>
すすきを飾る意味を説明するなら
すすきは魔除けの意味とともに、稲穂に見立てて豊作を願う意味があります。
なので、
- 「すすきを飾るのは、悪いことが起こったり、病気にならないように神さまに来てもらうためだよ」
- 「すすきはお米がつく稲に似ているから、秋にたくさんお米がとれるように、お月さまにお願いするためだよ」
といった風にいうとわかりやすいでしょう。
お団子を食べる意味を説明するなら
お団子は、農作物が収穫できたことをお月さまに感謝し、山盛りにするのは感謝が空のお月さまに届くようにという意味があります。
まんまるなのは月の形に見立てています。
なので、
- 「お団子をお供えするのは、食べ物がたくさんとれたことに、お月さまにありがとうと言うためだよ」
- 「お団子をたくさん積んでおくのは、お月さまに感謝が届くようにするためだよ」
と伝えてみましょう。
月の影のうさぎを説明するなら
月のうさぎについてはこちらの記事をまず参照してください。
月の影にうさぎが見えるのは、うさぎがお腹を減らした老人(帝釈天)に食べ物を持っていけなかったため、自ら火に飛び込んで食べ物となったことにあります。
その姿を見た帝釈天が哀れに思い、うさぎを永遠に月に映すことにしたのです。
なので、これはちょっとした物語として伝えることになりますね。
- 「うさぎはお腹を減らした神さまに食べ物をもっていけなかったんだって。」
- 「だけど、神さまにどうしても食べ物を渡したかったから、うさぎは自分から食べ物になったの。」
- 「そんなうさぎを神さまはかわいそうに思ったから、月に姿をずっと映しておくことにしたんだって。」
こんな感じで、お話を簡単に伝えてみましょう。
月見団子を並べるとき
段にして並べる月見団子は、数によって1段毎に並べる個数も違ってきます。
12個のとき
- 1段目(下):9個
- 2段目(上):3個
13個のとき
- 1段目(下):9個
- 2段目(上):4個
15個のとき
- 1段目(一番下):9個
- 2段目(真ん中):4個
- 3段目(一番上):2個
一番上となる3段目には、神事の場合は正面からみたとき、縦に2個に見えるよう並べます。
お月見でお月さまに対してお供えする場合は、お月さまから見た位置を考えると良いでしょう。
なお、横に2個並べると仏事としての扱いになります。
5個の場合
※5個は、15個を簡略した場合の個数となるようです。
- 1段目:4個
- 2段目:1個
お供えの器や配置
月見団子は本来なら、「三方(さんぽう)」と呼ばれる器に白い紙を敷いてお供えします。
しかし、一般的な家庭ではそもそも三方が無いことが多いので、お団子が入るサイズのお盆、お皿などでも大丈夫です。
白い紙は、奉書紙や半紙、てんぷらに使う敷紙などを使用します。
長方形の紙なら四辺または二辺を垂らす、正方形なら対角に敷いて端を垂らす敷き方などがあります。
位置ですが、
<位置>
- お月さまから見て左側:ススキや稲、野菜などの自然界のもの
- お月さまから見て右側:月見団子などの人が作ったもの
にすると良いと言われています。
お供え物を飾る場所について
お月見は月がきちんと見えて、ゆっくりと眺められる場所で行えればいいので、その場所に月見台を設けてお供え物を飾りましょう。
月見台と言っても立派なものを準備しなければいけないというわけではなく、決まりきった形式はありません。
小さなテーブルやちゃぶ台、出窓の張り出した部分に置いてもOKです。
ポイントは「月が見える場所にお供え物を置くこと」なので、部屋から月が見えるのであれば、窓辺にテーブルを置いてそこにススキやお団子などを置くと良いでしょう。
ベランダでお月見するなら、小さいちゃぶ台やミニテーブルなどを出してもOKです。
飾りが出来ない時や月が見えない家でのお月見の楽しみ方
通常通り、窓辺などにお月見団子やススキをお供えできればいいのですが、飾る場所がない家の場合もあるでしょう。
周辺の環境によっては、ススキをとる場所がないこともありますし、取ることが難しい場合もあります。
その場合は、必ずしもススキを使わなければいけない、とこだわる必要はありません。
ウサギの小さな人形など、食卓テーブルの中央、机の隅などに十五夜らしさが出るような飾り付けをするなどで演出してみてもいいでしょう。
場所が小さい場合は、スペースに収まるサイズの飾りをするだけでもいいのです。
旬の芋やお野菜を使った料理をつくり、食べるのも十五夜を感じさせるでしょう。
また、方角や住宅の関係で部屋や窓から月が見えない場合は、月が見えているか見えていないかにかかわらず、気持ちを込めて任意の場所で飾り付けをするだけでも構いません。
外に出てゆっくりと月を眺め、月光浴をするのでもいいでしょう。
それぞれの環境にあったお月見を楽しめるといいですね。(^^)
十五夜の意味まとめ
十五夜は年に一度しか来ない、お月さまが一番綺麗に見える日なので、この日はぜひお月見を楽しめるといいですね♪
本当ならきちんとお供え物を揃えられれば良いのですが、私の場合そこまでスペースを取れないので(汗)、窓辺にお団子だけ置いて十五夜を過ごそうかなと思います。(^^;)
十五夜の日付はきちんと把握しておくといいので、以下の記事をぜひ参照してください。↓
月のうさぎについてはこちらへ。
10月のハロウィンの、子どもへの説明の仕方については以下の記事をどうぞ~。
【秋の行事ページ】