毎年秋になると訪れる十五夜ですが、この日にはお月見をすることが定番となっています。
しかしなぜ十五夜には満月というイメージが定着しているのか?を知らない場合は多いのではと思います。
月の陰はうさぎに見えるという話もありますが、いったいどこにこのお話の由来があるのでしょうか?
今回は、十五夜がどんなものなのかについてと、十五夜には必ず話題になるうさぎや満月についてまとめてみました。
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そもそも十五夜とはなにをする日?
十五夜はもともと、農作物がとれたことを月に感謝したり、これから始まる収穫期の豊作を願うための日です。
十五夜に込められた意味については、以下の記事を見て下さいね。
十五夜にはすすきやお月見団子などを用意して、お月さまを愛でて眺めます。
もともとこの頃の月は一年の中でもとくに美しい月が見れると昔から言われていたので、お月見という行事につながっていったとも言われています。
なぜ「十五夜=満月」のイメージが付いているのか
もともと月が綺麗に見える秋は、平安時代から「観月の宴」として月を眺める習慣がありました。
昔から、欠けていないまん丸の満月は豊穣を象徴するものと考えられていました。
つまり満月を見るのは豊作を願うためという意味があるのですが、必ずしも十五夜が満月になるとは限りません。
十五夜は旧暦の8月15日を指しますが、旧暦はもともと月の満ち欠けを基準にして暦がつくられていました。
月の周期の約29.5日を半分にした15日前後は必ず満月になるので、8月の15日を「十五夜」と呼ぶようになったのです。
満月への豊作への願いと、秋に綺麗に見える月を眺める習慣などが重なったのも、「十五夜といえば満月」といったイメージにつながったのではと思います。
たとえ満月に重ならなくても、前後する日付は2日前後くらいです。
2016年の十五夜は残念ながら満月にはなりませんが、この時期の月はとても綺麗に見えるので、ぜひお月見を行いたいですね。
十五夜に準備するもの
<準備する食べ物>
- お月見団子:米の収穫を祝って、米を粉にし、丸めて月に見立てたもの。
- すすき:米の収穫前であるため、稲穂に似ているすすきを飾るようになった。
- 里芋・さつまいも:この時期にとれる芋の収穫を祝い、月にお供えする。十五夜は「芋名月」とも呼ばれる。
- 秋の果物・野菜:ぶどうや柿、梨など。とくにツルが巻く食べ物は、神さまとのつながりが強くなると言われる。
<準備物>
- 三方(さんぽう):お月見団子を乗せる胴の前と左右に穴がある台。無い場合はお盆やお皿でもOK。
- 白い紙:お団子を乗せるための敷き紙。半紙や奉書紙、天ぷら用の紙でもOK。
- 月見台:お供え物やススキなどを置く台。立派なものでなければいけないわけではなく、収まるならちゃぶ台やミニテーブルでもOK。
お団子のサイズは十五夜の「十五」にちなんで、一寸五分(約45mm)が良いといわれます。
中国では、お月見の日にお供え物や月餅を贈り合う習慣があります。
十五夜という風習はもともと中国から伝わったものですが、中国では月見の日に里芋を食べるといいます。
お月見は里芋の収穫祭だったという説もあり、お月見団子は里芋に形を似せたことから始まったと言われています。
月見団子のまんまるの形は満月に似せているという説もありますが、こういった部分が混ざって、日本では丸く作ったお月見団子をお供え物として使うようになったそうです。
なお、飾り立ての仕方は、以下の項目を参照してもらえればと思います。
- お月見団子の数や並べ方…月見団子を並べるとき
- お団子の器やお供え物の配置…お供えの器や配置
- 家の中でお供え物を置く場所…お供え物を飾る場所について
<【十五夜】月見うさぎ団子の作り方(レシピ)>
お団子は普通に丸く作ってもいいですが、うさぎの形にしてもかわいいですね~
なぜ月とうさぎが関係しているのか
月とうさぎについては、こちらの項目でも書いているのですが、この記事ではもっとつっこんでまとめていきたいと思います。
月のうさぎの伝説はインド神話から
月にうさぎが映るようになったのは説がいくつかあるようですが、とくに知られているのがインドのジャータカ(本生経)の中のお話です。
昔、「うさぎ」と「きつね」と「さる」が仲良く暮らしており、彼らは自分たちが獣の姿をしていたのを不思議に思っていました。
前世で何か悪いことをしたからではないか?と疑問に思った3匹は、今からでも人間の役に立つことを考えだしたのです。
このことを知った帝釈天(たいしゃくてん。仏教の守護神で、天帝とも呼ぶ。元は人間で、善行をたくさん行うことで神さまの主にまでなった)は、3匹を試そうと、お腹を空かせた老人として目の前に現れました。
帝釈天は、この動物たちがいったいどのようにして善行を行うのかと考え、老人の姿で
と、3匹にお願いしたのです。
「うさぎ」と「きつね」と「さる」は、これはチャンスだ!と思い、喜んで食べ物を探しにいきました。
「さる」は得意の木登りで木の実や果物を持ち寄り、
「きつね」は狩りをして鳥や魚をとり、老人に与えました。
しかし、唯一「うさぎ」だけは、どんなに頑張っても、「さる」のような木の実も、「きつね」のような魚や鳥も、とることができません。
戻ってきた「うさぎ」は、
と「きつね」と「さる」に言い残し、再度老人に与えるための食べ物を見つけにいったのです。
しかし、その後「うさぎ」は手ぶらで戻ってきました。
そんな「うさぎ」を、「きつね」と「さる」は嘘つきだと責め立てましたが、「うさぎ」はこう言ったのです。
と言って、自ら火に飛び込み、老人の食べ物となったのです。
この様子を見た老人は、すぐに帝釈天へと姿を戻し、
と、言い放ち、うさぎが月に映ることになったといいます。
うさぎは生き返った?
火に飛び込んだうさぎは、真っ黒に焦げてしまったわけですが、老人はこれを哀れみました。
焼けたうさぎの皮を剥いで月に刻み、その後うさぎが生き返ったという説があります。
うさぎはお釈迦様の前世
帝釈天の食べ物になるため、火に飛び込んだ「うさぎ」はお釈迦さまであったという話もあります。
お釈迦さまは人以外のいろんな姿で菩薩行(ぼさつぎょう。他者に対する慈悲や施しを行い、最高の悟りへ至ろうとする修行のこと)を行い、はるか昔には前世の姿が「うさぎ」だったころもありました。
帝釈天は、「うさぎ」の姿をしたお釈迦さまの菩薩行が、本物かどうか試そうと乞食僧として目の前に現れ、「うさぎ」に肉を求めたのです。
このとき「うさぎ」は、僧のために自らの身体を差し上げようと火に飛び込んだのですが、まったく焼けなかったといいます。
そんな「うさぎ」の姿を見た帝釈天は感服し、印として月にうさぎの姿を刻み、永遠に映るようにしたのです。
お釈迦さまはこういったたくさんの菩薩行を行い、最後にはインドで仏陀として最上覚されたといいます。
うさぎが月で餅つきをしている理由
古代の中国では、うさぎは月で杵(きね)を持ち、不老不死の薬をついていると考えられていました。
日本に伝来したときは、この話が「餅をつく」に変化したと言われており、これは日本で満月を表す「望月(もちづき)」がだんだんと「餅つき」になったと言います。
もともと、うさぎは空腹の老人のお腹を満たすために火に飛び込んだので、老人に食べ物をあげるために餅つきをしているとか、あるいはうさぎ自身が食べ物に困らないようにするためという説もあるようです。
お月見はもともとお米の収穫を願う行事でもあったことから、お月さまへの祈りや感謝をする意味が、お米を使った餅つきに込められていたと考えられますね。
世界の月への解釈
日本では月は豊穣のシンボルであったり、感謝をする対象であったりしますが、世界の中でも月を神聖視するのはアジアと中近東の一部くらいです。
満月の夜は犯罪が増えるといった話もありますが、これはヨーロッパから生まれた月への解釈で、満月は人の心をかき乱すと考えられています。
狼男の話のように、人間が満月を見て獣に変身する話もあれば、月の女神が死を暗示するといった言われもあります。
<国ごとの月への考え方>
- イギリス:「月狂病」という、月の光を長く浴びると精神異常が起こると言われている。
- アイスランド:妊婦が月に向かって座ると精神に以上が現れると言われる。
- ブラジル:新生児を月光に当ててはいけないといういわれがある。
国それぞれの月の模様の見え方
日本では月の模様と言えばうさぎの餅つきですが、国ごとで模様への解釈がそれぞれ違っています。
ヨーロッパやドイツ、カナダのインディアンでの見え方はこちらの項目の後半でも書いていますが、ここではさらに詳しく他の国での見え方を紹介したいと思います。
- 中国:天女、カニ、カエル、薬草をつくウサギ
- アメリカ:女性の横顔
- アメリカインディアン:ワニ、トカゲ
- ベトナム:大きな木の下で休息を取る男性
- モンゴル:犬
- カンボジア:菩提樹の木の根元で、杖を持った老人がいる
- ラオス:おばあさんが足で踏む米つきで米を挽いているように見える
- アラビア:吠えるライオン
- インドネシア:編み物をする女性
- インド:ワニ
- オランダ・デンマーク・ドイツ:悪行のために月へ幽閉された男の姿
模様ではないですが、月へのいわれとして、
- オーストリア:月へは男の人が住んでいて、灯をつけたり消したりを繰り返している
- モンゴル:嘘をつくと月の犬が吠える
- ベラルーシ:祖霊が住んでいる
などがあります。
十五夜の月が綺麗な理由
十五夜は秋にあたりますが、季節それぞれで空の見え方が違うので、月の見え方も当然に春夏秋冬で変わってくるわけです。
満月は夏は低い位置に登り、冬は高い位置に現れます。(太陽と真逆になるのですね。)
夏の満月は低いため、高い建物などに隠れやすいだけでなく、大気が影響してぼんやりとした月に見えてしまいます。
つまり夏の月を夜に見上げてみても、はっきりとした月が見える確率は比較的低いのです。
一方、冬の月というのは頭上のあたりにまで登るので、高すぎて見るのが大変です。
月をゆっくりと眺めていたくても首が疲れてしまいます。
冬の空は澄んでいるので、星ははっきりとして見えやすいものの、長時間月を見るには不向きです。
春は花粉などが飛びますので、空気がぼんやりとしがちですが、秋は空に星も少なく、月の美しさが際立ちます。
つまり秋の月は、登る高さや空の澄み具合から言っても、見るのに適した月と言えるのです。
十五夜についてまとめ
個人的には月の模様がうさぎの餅つきに見えるとは思わないんですけど、国によって解釈が違いすぎて単純に驚きです。(^^;)
満月には豊作を願う意味があるので、お月見でお供え物をするときはお団子や果物があるといいですね。
お供え物の詳しい意味についてはこちらの記事をご覧ください。
今年の十五夜の日付や、満月になる確率についてはこちら。