熱中症は、暑い中にいることで体の中の水分や塩分が不足したり、身体に熱がこもることで身体の体温調節機能が一時的に狂ってしまうことで発生する様々な症状の総称を指します。
急激な気温の変化が現れた時に起こりやすいので、梅雨明け後など、気候に変化が現れるときはとくに注意が必要です。
今回は熱中症によって下痢や嘔吐、発熱が治らない時の対処法をまとめていきます。
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熱中症で下痢や嘔吐が起こってしまう理由
熱中症では体のだるさや頭痛といった症状がでますが、下痢や嘔吐といった体の不調も現れることがあります。
冷たいものをたくさん食べているわけではないのに、なぜ…?と思うこともあるでしょう。
実は、熱中症によって引き起こされる嘔吐や下痢は、食あたりの下痢とは原因が違っています。
熱中症によって下痢や嘔吐が起こるのは、暑さによって汗を大量にかき、水分だけ補給して塩分やミネラルを摂取しないことで起きるのです。
身体には、体内にある水分に対して塩分の濃度を一定に保とうとする機能が備わっているため、水分だけ過剰にとっても排出してしまうのです。
つまりは水だけとっても、塩分がなければ水分濃度が薄まってしまうため、不要な水分は身体が受け付けないようになっているのです。
すると下痢や嘔吐といった症状として現れるようになります。
身体の水分や塩分、ミネラルのバランスが崩れてしまうのを防ごうとして、身体が不調を訴えている状態です。
この状態では薬を飲んでも、厚着をしても、カイロをお腹に当てても治らないのです。
逆のパターンに、塩分をとり過ぎると水が欲しくなりますよね。
これも仕組みは同じで、塩分が身体に増えてしまったため、濃度を一定にしようとして水分を身体が欲するのです。
身体に水分ばかりが多くなり、塩分が足りない状態だと「熱痙攣」と呼ばれる症状を引き起こし、手足をつったり筋肉の痙攣、顔色が悪くなるといった症状がではじめます。
ナトリウムは筋肉の収縮や弛緩を正常に保つ働きがあるのです。
下痢の原因である「自発的脱水」
身体は水分と塩分を、一定の濃度で保つことで汗を出し体温調節を行っています。
体液が薄まるのを防ごうとして水分を下痢として外へ排出する症状のことを「自発的脱水」と呼びます。
<自発的脱水になってしまうステップ>
- 暑いところで汗をたくさん出し、水分と塩分が身体から失われる
- お茶や水など、塩分が含まれない水分で補ってしまう
- 身体の塩分濃度が薄まる
- 体液が薄まらないよう、身体が水分を排出しようとする。
- 下痢や嘔吐が起こる
下痢が起こってしまうのは2番のところがポイントで、塩分をきちんととらないことで身体が水分を排出してしまうのです。
こうして体内の環境を一定に保とうとする機能を恒常性(ホメオスタシス)と呼び、この機能が働くことで下痢や嘔吐といった症状が引き起こされるのです。
水分補給の行い方がポイントで、塩分を一緒に摂取することが必要になります。
下痢の症状が何日も治らない人は、水分ばかりを補給して暑い中活動していることも多いため、ミネラルの入った麦茶やスポーツドリンクでの塩分摂取も忘れず行いましょう。
室内では無理せず冷房をつける
節電などのために冷房をつけず、高温になった室内で過ごすと、熱中症になるリスクも高まる上に嘔吐や下痢の原因になります。
熱中症による下痢は高温になった室内で起こることが多く、暑さを我慢することで引き起こされることが多いです。
もちろん外の暑さに対して予防をすることも大切ですが、そもそも室内が涼しくなっていないと、身体の体温が下がる余裕もありません。
無理をせず冷房や扇風機などで風通しをよくし、身体の熱を取り除くことも熱中症に対する予防になります。
下痢や嘔吐の対処法について
ここまでをまとめると、熱中症で下痢が起こってしまうのは、塩分が不足してしまうことで自発的脱水が起こってしまうからです。
- 下痢や嘔吐は脱水症状が進んでいるサイン
- 下痢と一緒に塩分も排出されているので、さらに熱中症にかかりやすくなる
治すためには、塩分とミネラルの不足を解決することが大切です。
下痢や嘔吐の時の水分摂取の方法
水分と塩分を一緒に補給することが大切なので、
<ナトリウム・水分を一緒に含む飲み物>
- 経口補水液
- スポーツドリンク(アイソトニック飲料とハイポトニック飲料)
【アイソトニック飲料とハイポトニック飲料】
- アイソトニック飲料…浸透圧が普段過ごしている人間と同じなので、通常時の水分補給にオススメ。運動中の摂取は低血糖になるので注意。
- ハイポトニック飲料…浸透圧が運動をしている人間と同じ。スポーツ中の水分補給に良い。
経口補水液とスポーツドリンク、これら2つがオススメです。
浸透圧やアイソトニック飲料・ハイポトニック飲料については、以下で詳しくまとめています。
経口補水液って何?
経口補水液には、水分や電解質(ナトリウム)、塩分の吸収を早めるための糖分が入っています。
下痢や嘔吐で排出してしまった体液を補うことができるので、熱中症による脱水症状にも最適な飲み物なのです。
成分が身体に吸収しやすい量に調節してあるため、とくに熱中症によって不調を感じている時にベストです。
経口補水液の飲み方
- 数回に分けてゆっくりと飲む
- 500mlを1~2時間ほどで飲む
- 別のものを混ぜない、凍らせない、氷や砂糖を加えない(そのまま飲む)
経口補水液は身体に浸透しやすいよう成分が調整されています。
他の液体を混ぜたり水を増やしたりすると、吸収率に影響を及ぼす可能性がありますのでそのまま飲むのがポイントです。
ゼリータイプのものもあり、小さな子供でも飲みやすいアクアライトという商品もあります。
経口補水液の作り方・水分の温度について
経口補水液は購入することも出来ますが、自分で作ることも可能です。
<材料>
- 水1リットル
- 塩3g
- 砂糖40g
これらを混ぜて作るだけでOKです。
※500mlを作りたい場合は、分量をそれぞれ半分にしてください。
また、水分の温度についてですが、基本的には5~15度の少し冷ための常温水がいいでしょう。
あまりにも身体が熱をもっているなら冷水が良いですが、嘔吐や下痢の症状があるときは、冷やし過ぎると胃腸を冷やして負担になります。
経口補水液とスポーツドリンクはどう違う?
<塩分の分量(ナトリウム)>
- スポーツドリンク…40~50mg。普段過ごしている時の発汗、軽い運動時にオススメ。
- 経口補水液…115mg。下痢や嘔吐などの熱中症、激しい運動のあとに有効。
熱中症で嘔吐や下痢の症状がある場合、脱水症状によって水分や塩分が多く排出されるため、吸収率もよく塩分も多い経口補水液が有効です。
スポーツドリンクは適度な発汗があったとき、健康な時の水分補給に良いでしょう。
※スポーツドリンクは糖分も多いので、とり過ぎには注意です。
食べ物とカフェインについて
熱中症として下痢や嘔吐といった症状が出ている場合、食事の摂取は無理をして行わないでください。
もしお腹が減った場合は、熱中症では胃や食道などの内臓も弱っていますので、おかゆや、すりおろしたリンゴなどの消化の良い物を口にし、あまり身体に負担がかかるものは食べないようにしましょう。
脂っぽい食べ物や、肉などの動物性食品は消化に時間がかかるので、基本的には野菜や果物、大豆食品などの植物性食品がオススメです。
<お腹の調子が悪い時の食事>
- みそ汁
- すりおろしたリンゴ
- 野菜スープ
- おかゆ
- とうふ
- バナナ
【下痢や嘔吐の時に気をつけること】
- カフェインが入っている飲み物は利尿作用があり、塩分を排出してしまう。下痢や嘔吐などの胃が荒れているときはとくに注意。
- 下痢や嘔吐で体内の水分を排出した時は、水分と一緒に塩分もきちんととること。
- 嘔吐などの症状が重い時は、楽な姿勢で安静にすること。冷房で身体を冷やし過ぎないように注意。
カフェインが入っている飲み物は、緑茶、紅茶、コーヒーなどがあります。
以下の項目で詳しく説明していますので、興味があればぜひご覧ください。
水分・塩分補給を行っても下痢が治らない時は
水分補給の時、一度に摂取しすぎていると体に負担がかかり、逆効果になってしまうこともあります。
しかし、水分や塩分をゆっくりと摂取し、きちんと飲んでいても症状が良くならない場合は、お医者さんで診察を受けましょう。
熱中症において、吐き気や嘔吐、他にも頭痛や集中力の低下といった症状があるときは、すでに熱中症の中程度のレベルに達してしまっています。
自宅療養で改善しない場合は胃腸炎や内臓疾患なども疑えますので、早めに病院に行くことが大切です。
下痢・嘔吐の他の原因
熱中症以外にもアイスや氷菓子といった、冷たいものを食べ過ぎたことでお腹が冷え、不調を引き起こすこともあります。
クーラーや冷房などで自律神経の乱れが起こり、温度変化に身体がついていけず、胃腸の機能が弱って調子が悪くなります。
すると嘔吐や下痢といった症状につながりますので、身体の冷やし過ぎにも注意しましょう。
夏になると、食べ物が悪くなって食あたりとなることもあり、夏風邪のウイルスが身体の免疫力を下げ、下痢や引き起こすこともあります。
夏場はなるべく生ものを冷蔵庫に入れ、食べるときは悪くなっていないかしっかり確認することが大切です。
健康な時の普段からの食事について
毎日バランスの良い食事を行うことで、熱中症の予防につながります。
たとえば、レモンや梅干し、グレープフルーツなどの酸味があるものに含まれているクエン酸は、暑さによる疲労を回復させる効果があります。
わかめやひじきなどにはミネラルもたっぷりと入っているので、夏の間にも取り入れたい食品と言えます。
夏に旬を迎えるスイカや桃などは、細胞の水分を保つために必要になるカリウムも含まれますので、食後や間食などに食べるといいですね。
夏場には朝や夕方などの涼しくなった時間帯に運動を行うのもオススメです。
運動後に牛乳を飲むと、血液の量を増やすことができるのでぜひ飲んでみてくださいね。
塩分を積極的にとる
夏場は、塩分が多く含まれる食品を積極的に取りましょう。
もちろん、とり過ぎには注意して食事に取り入れるのが大切です。
- 生ハム
- 塩こんぶ
- みそ、みそ汁
- 漬物(なすやきゅうりなど)
- めんたいこ・たらこ
- しょうゆ
- 福神漬
- チーズ
- ドレッシング
- 塩飴
加工食品は塩分が多い傾向がありますが、添加物もその分たくさん入っていることが多いです。
適量摂取にとどめ、バランスよく食べることが大切です。
熱中症の嘔吐や下痢はどのくらい続くか
熱中症によって引き起こされる下痢や嘔吐は、塩分が入っていない飲み物ばかりで水分補給を行っていると引き起こされます。
なので、まずは塩分の入った水分を補給して安静にしていれば自然と治っていくでしょう。
ただし嘔吐が一度回復しても、3~4日は様子を見て、安静にすることが大切です。
脱水症状が進んでいると、汗を全くかかなかったり、呼びかけても意識がもうろうとしていたり、目や肌の乾燥、顔色が悪いといった症状が出てきます。
あまりにも熱中症を放置したままだったり、普段から不摂生ばかりしていたり、冷やした飲み物ばかり飲んでいると、身体にかかる負担も大きくなりますので長引く可能性があります。
治ったと思っても身体はまだ熱中症によって弱っていますので、しばらくは身体を気遣うようにしてください。
あまり無理をすると症状が悪化する可能性もある上、身体がさらに弱る原因となります。
熱中症では、初期の段階でめまいや立ちくらみといった症状が現れますが、初期では暑さでの疲労なのか、熱中症での症状なのか判断がつかないことも多いです。
しかし、症状が軽いからといって放っておくと頭痛や吐き気、嘔吐といった症状へ進行していきます。
夏場の暑さでは、思っているよりも身体に疲労が溜まっているので、バランスの良い食事と休養をしっかりととることが大切です。
外から帰ったら塩分と一緒に水分をとり、体温を下げることも忘れず行いましょう。
熱中症による下痢の特徴は、食事をとったあと毎回なることです。
嘔吐や下痢がかさなると身体の水分はどんどんと抜けていくので、水分補給を怠らないことが大切です。
自律神経が整うまで、無理をしないで身体をいたわりましょう。
普段からの熱中症対策について
- 休息、睡眠、休養をしっかりととる
- 身体が熱くなったら体温を下げるようにする
- 水分と塩分は一緒に取ることを意識する
- 冷房の温度が低すぎると、外の気温との差で熱中症になりやすくなる。冷房の温度は高めに設定する
- ビタミンCやビタミンB1、クエン酸を摂取し、疲労を身体にためない
- 食事ではミネラルがたくさん入った野菜などの摂取も意識する
- 風通しの良い服を着る。帽子や日傘もおすすめ。
- 直射日光の当たる所、熱がこもる場所(車内など)に長時間いない。
- 喉が渇く前にこまめな水分補給を行う
- 運動は真昼ではなく、朝や夕方の涼しい時に行う
日頃から暑さによるストレスを体にためないことも大切です。
休養や睡眠をとらなければ疲労もたまっていき、熱中症にもかかりやすくなりますので、身体を休めることを意識するようにしましょう。
また、クーラーの温度を下げ過ぎると、身体が汗をかく機能が衰えます。
汗には体温調節をする役割があるため、汗腺の機能が低下すると身体に熱がこもりやすくなり、熱中症にかかりやすくなるのです。
冷房病について
冷房病とは別名クーラー病とも呼び、クーラーの温度を下げ過ぎることで体の不調が現れる病気です。
頭痛や吐き気、下痢、嘔吐、腹痛、手足のしびれといった症状が見られます。
とくに女性は冷え性の方も多いので、クーラー病になりやすく冷え性の症状とも似ています。
<冷房病の症状>
- むくみ
- 不眠
- 肩こり
- 腰痛
- 腹痛
- 食欲がなくなる
- 下痢
- 嘔吐
- 手足のしびれ
冷房病は寒さ対策をすれば良いというものではなく、クーラーの冷えた空気が身体に染み付くと、冷房のかかった部屋にはいるだけで症状が現れるようになります。
たとえば買い物時のスーパーやコンビニ、外食時のファミレスなど、冷房がかかっている空間に入るだけで頭痛や肩こりなどの症状を訴える人もいます。
ひどくなれば吐き気から嘔吐まで進行することもあります。
<冷房病の特徴>
- 急激な温度変化に体温調節をする自律神経が対応できなくなり、耐えられなくなったために引き起こされる
- 気温差が5度以上ある場所を出入りすることで起こるようになる
冷房の温度を上げることが、何よりの解決策となりますが、環境によっては無理なこともあるでしょう。
その場合は羽織ものなどを持ち歩き、対処することをお勧めします。
<冷房から身体を守る服>
- スカーフやマフラー、ストール(首をあたためる)
- ひざ掛け
- 厚手の靴下
- 温かいタイツ
- 腹巻き
- 足元を温める電化製品
- レッグウォーマー
- マスク
- カーディガンなどの羽織もの
<冷房病の予防>
- 身体を温める飲み物を飲む。冷たい水よりも温かい白湯、お茶、しょうが紅茶などがオススメ
- 夏場のきゅうりやトマト、スイカなどは身体を冷やすので、食べ過ぎに注意する
- シャワーだけではなく、お風呂にゆっくりと浸かって温めることも有効。
水分には全体的に身体を冷やす性質があるので、冷たい飲み物ではなく温かい飲み物を飲むようにしましょう。
また、生の果物や野菜は、食品の性質に関係なく身体を冷やす作用がありますので、食べるときは温かいスープにして飲むなど、工夫して口にするようにしてください。
家でのクーラーの温度は27~28度くらいに設定すると身体も冷えすぎずすむでしょう。
熱中症の症状が出やすい人は、冷房の温度を低くしがちな人が多いと言われます。
外から帰ってきた時は身体にも熱がこもっていますので、初めのうちは冷房の温度が低めでもいいのですが、体温が正常に戻ってきたら高めに設定するようにしましょう。
熱中症対策に摂取して欲しいミネラル
ミネラルとは、ごく微量で身体の機能維持や調整をする栄養素のことを指し、元素そのものの栄養素を言います。
無機物とも呼ばれますが、汗によって失われるのは塩分だけではなく、カルシウムやカリウムなどの栄養素も一緒に排出されています。
体重65kgの人の場合、外に出ると一時間で500mlの汗をかきます。
1Lの汗をかくと40mgほどのカルシウムが失われると言われますので、牛乳などの摂取から積極的に取って行きたいミネラルと言えるでしょう。
カリウムは、夏場に出回るスイカや桃などの果物、野菜から幅広く摂取することができるので、バランスよく食べてしっかり栄養を補いましょう。
食欲がないときの食事について
栄養摂取をすることは、熱中症を予防するために大切なことですが、食欲がどうしても出ない日もあるでしょう。
そういった時は、1~2日くらいなら無理して食べる必要はありません。
身体を冷やし過ぎない程度にアイスクリームやスイカといった、食べやすいもの、食べたいと思うものを口にしましょう。
疲れをとってくれるクエン酸が入った食品(レモン、梅干し、グレープフルーツなど)や、ビタミンB1が入った食品(豚肉)などがとくにオススメです。
熱中症で起こる発熱に薬は効く?
熱中症が原因になって起こる発熱は、風邪のようにウイルスを退治しようとして起こる発熱とは違って、水分が不足することで体温調節ができなくなって引き起こされます。
つまりは薬を飲んでも治るようなものではないので、きちんとした処置をせず、安易にそのまま放置していれば危険な状態になるのです。
人間の体は、体温よりも周りの気温が高い時、肌から熱を排出して体温が上昇しないよう調節を行っています。
汗をかくのは体温を逃がすための体温調節の役割をしており、身体の熱がこもらないよう一定に保つ仕組みになっているのです。
しかし、これらの体温調節が上手くいかなくなると熱中症という症状として現れるようになります。
炎天下の中で汗をかき続け、身体に水分が足りなくなると、発汗による体温の調節ができなくなり体温が上昇するようになります。
放っておくと皮膚からの熱を排出することもできず、熱が身体に溜まり続けることになり、体温が上昇して発熱につながるようになるのです。
なので、普段からしっかりとした水分・塩分・栄養補給を行い、熱がからだにこもってしまったら、体温を下げるように工夫をしましょう。
そうすれば熱中症による発熱を起こすことはありません。
熱中症によって起こった発熱はいつ治る?
人間の体は、基本的に風邪では41.5度以上の発熱は起こらないとされていますが、熱中症の場合は身体が体温をコントロールすることができなくなっているので、命に関わるラインだと言われている42度以上の熱が出ることもあります。
これだけの熱になると、自宅療養では治せず緊急事態とも言えますので、すぐに病院に行くか救急車を呼んで対処をしましょう。
熱中症が完全に回復するまでは、早ければ2~3日、長くて1週間くらいですが、それ以上続く人もいますので個人差があります。
長く放っておいた熱中症であれば、それだけ治るまで時間がかかりますので、自分の身体と相談し様子を見ながら熱中症を治していきましょう。
発熱が治らない時に考えられる原因
熱中症による発熱が治らないのは体温調節の機能が回復していないことが原因なので、まずはこまめな水分補給を行いましょう。
そして冷房の温度があまり低すぎても体温調節が上手にできなくなるため、エアコンの設定温度を確認しましょう。
低すぎれば、冷房が原因になって発熱が起こっていることも考えられます。
温度は27度から28度くらいに設定し、冷えすぎない工夫をすることも大切です。
自律神経が乱れると体温調節がうまくできなくなりますから、寝不足、栄養不足も発熱が治らない原因となります。
なお、発熱が起こっても翌日には収まることがありますが、すぐに炎天下の中で活動することは危険です。
熱中症に一度かかってしまうと、大腸菌がつくりだした内毒素が血液中に流れ出るので、身体の抵抗力が弱っている状態になっているのです。
熱中症の症状から回復したからと油断して暑い中活動すると、熱中症の発熱が慢性化して無駄に続いたりします。
熱がなかなか下がらなくなったりする上、もう一度かかりやすい身体の状態になっていますので、一度発熱が出てしまったら十分な休息をとることを意識しましょう。
熱中症の三段階
現在、熱中症は症状によって三段階に分けられています。
- 軽度(熱痙攣・熱失神):めまいや立ちくらみ、筋肉痛、こむら返り、顔のほてりといった症状が出始めます。水ばかりとって、血液の塩分濃度が低くなると起こります。現場での応急処置で対応できるレベルです。
- 中度(熱疲労):吐き気、嘔吐、不快感、集中力の低下といった症状が見られます。身体のだるさを感じることもあります。このレベルが深刻になると、病院に行く必要があります。
- 重症(熱射病):40度以上の高熱、けいれん、意識障害、手足の運動障害(まっすぐ歩けない)といった重症をともない、危険な状態なのですぐに病院での処置をうける必要があります。
レベル2の段階ですでに病院に行ったほうが良いともいわれますので、心配な場合は症状が軽いうちから診察を受けることも予防になるでしょう。
お医者さんから直接アドバイスをもらえば安心もできますので、症状がよくならない場合は早めに病院に行きましょう。
熱中症は軽度、中度でも短時間で重症化することがありますので、のどが乾く前に水分補給を行い、こまめな休憩が非常に大切です。
(あまり重症になると集中治療を受ける必要があります。)
なお、高熱が出ているにもかかわらず寒気を訴える場合はかなり危険な状態です。
そのような状態になる前に、普段からの対策はきちんと行っておきましょう。
<対処法>
- 軽度…涼しいところに避難し、衣服をゆるめて水分と塩分を補給する。
- 中度…足を少し高いところに置いて休ませる。水分や塩分がとれないときは病院で点滴を受ける。
- 重度…まずは救急車を呼んで病院へ。身体をできるだけ冷やすようにする。
重症の人への対応について
- 呼びかけて意識があるか確認。名前に返事しなかったり、反応がなければ重症。
- 意識がおかしければすぐに救急車を呼ぶ。
- 日陰や冷房があるところなど、できるだけ涼しい場所に移動する
- 救急車が来るまで可能なかぎり身体の体温を下げるようにし、呼吸や脈拍の確認をする。足を高くしマッサージをする。
重症の人の体温を下げる工夫
身体の温度を下げるなら、首の生え際や耳の下のあたりを冷やすと、太い血管が通っているので冷やしやすいです。
- 積極的にマッサージし、震えを起こさせないようにする
- 氷や保冷剤、アイスパックなどを下肢の付け根(大腿動脈)、腋の下(腋下動脈)、首の横(頚動脈)に当てると効率的に冷やせる
- 濡らしたタオルを体に当て、気化熱(水が蒸発するときに、熱を奪っていく性質)を利用して体を冷やす。服に直接、霧吹きなどで水を吹きかけても良い。
- 濡らしたらうちわや扇風機などで風を送るのも有効。
- 必要があれば手足の末端部や体幹部をマッサージ。
- 水は温水が良いが、無理なら冷水でもOK。
なお、返事ができて意識がある人には、まずは涼しい場所に移動して衣服をゆるめて通気性を良くします。
水分補給ができるならスポーツドリンク等を飲ませますが、嘔吐の症状がある場合病院で点滴を受ける必要があります。
この場合も足を高くする、末梢から中心部にかけて手足をマッサージするのも有効です。
熱中症による頭痛の期間について
⇒熱中症の頭痛や吐き気の症状に薬は効くの?翌日に続く状態になったら治し方はどうする?
頭痛に関しては、まず上の記事をご覧ください。
熱中症によって頭痛が起こるのは、ある程度熱中症が進行している状態だと言えます。
頭痛であっても下痢や嘔吐と同じように、ゆっくりと水分・塩分補給を行い、涼しい部屋で安静にして休養をとる必要があります。
あまりにも頭痛がひどくなると薬を飲みたいと思うかもしれません。
しかし熱中症による頭痛に根本的に効くのは、身体に不足した水分・塩分を補給することと、上がってしまった体温をきちんと正常に戻すことです。
対処を行えば翌日には一度頭痛は治まりますが、だいたい数日から一週間くらいは頭痛が起こることもあります。
熱中症の頭痛は自律神経の乱れによって起こるため、整うまではある程度の時間がかかるのです。
なので毎日熱中症への対策を行い、身体を気遣うようにしましょう。
水分と塩分を必ずしも同時にとらなければいけないわけではない
スポーツドリンクや経口補水液は、塩分も含まれていて夏場の水分補給によい飲み物と言えます。
しかし、必ずしもこれらの飲み物でなければいけないわけではありません。
普段はミネラルを含む麦茶を飲み、外を歩くときは塩飴を舐めたりなど、別々で補給をする手段もあります。
食事の塩分量を少し増やして、漬物や梅干しなどを積極的に食べるといった工夫をすることもできます。
スポーツドリンクはとくに糖分も多いですから、カロリーを気にすることもあるでしょう。
なので普段、塩分を食べ物から摂取することは、夏太りを予防するためにもおすすめです。
乳幼、子供の熱中症について
子供の場合はウイルス感染による嘔吐や下痢から脱水症状になることもあります。
汗をかくのと同じように水分と塩分を失いますので、こまめな水分補給を行いましょう。
<熱中症のサイン:乳児の場合>
- 顔のほてり、身体が熱い
- 元気がない
- ミルクなどの水分をとらない
- なき声が弱い
- 便の量が少ない
- 嘔吐がある
- 不機嫌
- 熱があるのに汗をかかない
- 舌が白く見える
<熱中症のサイン:子供の場合>
- 顔のほてり、体が熱い
- 元気がない、動きたがらない
- 汗をかかなくなる
- めまいや頭痛、腹痛をうったえる
- 尿が出ない
熱中症の症状まとめ
嘔吐や下痢の原因は、水分以外に塩分の補給が足りないことで起こります。
水だけではなく、きちんとスポーツドリンクや経口補水液などのナトリウムを含んだドリンクで塩分を補給しましょう。
夏はついつい水分補給だけに目が行きがちですので、同時に塩分も摂るように意識するのが大切です。
また、運動などで暑さにそなえた身体を作ることもおすすめできます。
とくに運動後に牛乳を飲むと、血液の量が増えて熱中症にもなりにくい身体になります。
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